本プロジェクトは、マルチスピーシーズ(多種共存)の視点を取り入れた人文系研究に向けた可能性と課題を検討しつつ、文理融合的な視座に立った統合日本学を探求することを目的としている。そこで、日本の歴史・社会・文化において人間でない生物が持つ主体性と彼らが様々な人間経験の形成に果たした役割を分析する。研究代表者として、黄は在来植物の利用を論じた江戸時代の救荒書から、帝国日本における薬不足への日常的な対応に至るまで、植物の政治的動員のあり方を追跡し、それぞれの植物が「薬草」「野菜」「雑草」といった価値秩序の中でいかに位置づけられ、またその秩序を強めたり揺るがしたりするようになったのかを問う。研究分担者の越智は日本で行われる実験動植物の慰霊碑・慰霊行為を人類学的に研究する。研究対象となった他種へのケアが社会的・制度的にどのように表現・正当化されるのか調査することで、人間が他種を利用することに伴う倫理的負債や感情的関係性を可視化し、科学研究における共生のあり方や責任の取り方を再検討する。
多種への関心を知的多様性に対する取り組みへと広げながら、本プロジェクトでは学際的な協働モデルの構築も目指す。とりわけ、東北大学総合知デジタルアーカイブの活用に加え、歴史学・人類学と医学・薬学分野の知見を融合することで、多種共存の過去・現在・未来に関する知識とその生産について、より包括的かつ統合的な理解を目指している。
