多種共存の日本学に向けて:可能性と課題

共同研究

多種共存の日本学に向けて:可能性と課題

研究期間 2025年12月 - 
研究代表者 黄 天元(統合日本学センター 助教)

研究概要

 本プロジェクトは、マルチスピーシーズ(多種共存)の視点を取り入れた人文系研究に向けた可能性と課題を検討しつつ、文理融合的な視座に立った統合日本学を探求することを目的としている。そこで、日本の歴史・社会・文化において人間でない生物が持つ主体性と彼らが様々な人間経験の形成に果たした役割を分析する。研究代表者として、黄は在来植物の利用を論じた江戸時代の救荒書から、帝国日本における薬不足への日常的な対応に至るまで、植物の政治的動員のあり方を追跡し、それぞれの植物が「薬草」「野菜」「雑草」といった価値秩序の中でいかに位置づけられ、またその秩序を強めたり揺るがしたりするようになったのかを問う。研究分担者の越智は日本で行われる実験動植物の慰霊碑・慰霊行為を人類学的に研究する。研究対象となった他種へのケアが社会的・制度的にどのように表現・正当化されるのか調査することで、人間が他種を利用することに伴う倫理的負債や感情的関係性を可視化し、科学研究における共生のあり方や責任の取り方を再検討する。

 多種への関心を知的多様性に対する取り組みへと広げながら、本プロジェクトでは学際的な協働モデルの構築も目指す。とりわけ、東北大学総合知デジタルアーカイブの活用に加え、歴史学・人類学と医学・薬学分野の知見を融合することで、多種共存の過去・現在・未来に関する知識とその生産について、より包括的かつ統合的な理解を目指している。

研究メンバー

黄 天元

研究代表者
東北大学 統合日本学センター 助教

専門分野:日本史・無知学

越智 郁乃

東北大学 大学院文学研究科 准教授

専門分野:文化人類学・民俗学

その他参画者

・田中 大介
(自治医科大学 大学院医学研究科 教授)

・Aya HOMEI
(The University of Manchester, Japanese Studies, Reader)

・Isaac C. K. TAN
(Columbia University, Weatherhead East Asian Institute, Postdoctoral Research Scholar)

研究成果

■越智准教授がトークセッション「祈りと物質」に登壇しました
 2026年2月1日 BUoY(東京 北千住)

 本セッションでは、まず美術作家の松岡まどかさんが、自身の個展について解説を行いました。続いて、越智准教授による講演「ものを導く、ものに導かれる:葬送墓制とマテリアリティの人類学」が行われました。
 講演では、日本とフランスの葬送墓制や慰霊碑を具体例に挙げながら、人と墓との相互作用によって形づくられる慰霊実践について解説がなされました。墓は単なる「物」ではなく、人々の行為や記憶、感情と関わり合いながら、祈りのかたちそのものを方向づける存在でもあることが示されました。
 講演では、日本とフランスの葬送墓制や慰霊碑を具体例に挙げながら、人と墓との相互作用によって形づくられる慰霊実践について解説がなされました。墓は単なる「物」ではなく、人々の行為や記憶、感情と関わり合いながら、祈りのかたちそのものを方向づける存在でもあることが示されました。
 当日は、一般の観覧者に加え、他の美術作家やコレクターの方も参加し、活発な議論が展開されました。参加者からは、「儀礼は人が内容を決めているものだと思っていたが、人以外のさまざまな存在との関係の中で慰霊行為が形づくられていく側面に気づかされた」といった感想も寄せられ、本セッションは、祈りと物質の関係をあらためて問い直す機会となりました。

▼イベント概要
https://cijs.oii.tohoku.ac.jp/news/detail---id-111.html

  
撮影:小川大和さん

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