戦争記憶の世代間継承に関する学際的研究:トラウマの語りと共有に注目して

共同研究

戦争記憶の世代間継承に関する学際的研究:トラウマの語りと共有に注目して

研究期間 2025年8月 - 
研究代表者 越智 郁乃(文学研究科 准教授)

研究概要

 本研究は、戦争記憶の継承について、戦争体験の語りと共有に関する実態の国際間比較を通じて議論することで、ナショナリズムに収斂しない記憶研究の地平を拓くことを目指す。

 戦争の集合的記憶に関する先行研究では、各国における被害の記憶がナショナリズムに取り込まれ、和解を妨げる構造があると指摘される。そこで本研究で注目するのが「被害の競合」ではなく、「戦争トラウマの共有」である。戦争や戦時性暴力によって生じたトラウマからの回復や喪の作業として重要なのが、トラウマの物語化・表象化である。トラウマ的記憶を物語記憶として想起可能な記憶へと変換させる行為は、これまで極めて個人的なものとされてきた。しかしその行為が文化・歴史的な表現形式をとることに注目すると、医療だけでなく人文社会的にもトラウマを扱う意義があると指摘される。

 そこで本研究は、日独の戦跡観光(越智)・中国の家族関係(石井)の事例研究を基に、戦争トラウマがツーリズムという公共性、あるいは家族という親密性の中において語り共有される様相を取り上げ、他者と痛みを分かち合いながら生きる意味を論じることで、グローバルな戦争記憶を扱う意義を示したい。

研究メンバー

越智 郁乃

研究代表者
東北大学 大学院文学研究科 准教授

専門分野:文化人類学・民俗学

石井 弓

東北大学 東北アジア研究センター 准教授

専門分野:中国地域研究・オーラルヒストリー 

その他参画者

・Steven Ivings
(京都大学大学院 経済学研究科 准教授)
・Murphy Mahon
(京都大学大学院 法学研究科 准教授)
・Takuma Melber
(Heidelberg University, Heidelberg Centre for Transcultural Studies 講師)
・吉田 香織
(立命館アジア太平洋大学 教授)
・越野 剛
(慶応義塾大学文学部 教授)
・王 広涛
(復旦大学日本学研究センター 准教授)

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